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『翠の星に 旅人来たる
幾千万の空間を 旅し 去りゆく
幾千万の産物を 我らに 与えゆく
光よ彼らの道を拓け 闇よ彼らの道を繋げ
子らよ帰路を彼らに示せ』
そんな唄だった。泣くのもわすれ、僕はポカンと少女を見上げた。
「……これは童謡の一節なの。子供の頃は訳がわからなかったわ、本当に」
だろうな、と思う。唄全体の言葉遣いが、子供向けではない。霞む視界に、彼女の姿を捉える。
「この唄と伝説は同じ事を言っている。違う世界から来た異世界人が、私たちに何かを与え、去っていく。それに対して私たちは帰り道を与えなきゃいけない、と」
まっすぐと、ラウカは僕に視線を落とした。
「イアルディアでは、そんな人たちを旅人と呼んで、彼らが帰る旅協力したり、己のために利用したりしてきたわ。彼らの力は、未知数だから」
緋色の瞳が揺れる。そこに見えるのは、未知への期待か、純粋なる親切心か。
ラウカは、僕に手を差し出した。
「ねぇ……ユウヤ。私に貴女が帰る手伝いをさせて頂戴な」
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