ワールド・END

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 教室の戸を開けたら、そこには暗幕が張られていた。まだ誰もいない教室の電気は点けられていなくて、朝だというのにまるで夜のように薄暗い。  一瞬、教室を間違えたかと思った。しかし、確認してみるもここは理科室ではなく私が在籍している三年四組だ。記憶が正しければ、昨日までは風に靡くカーテンは薄いグリーンだったはず。  それに、もうすぐ八時十五分を回るというのに、教室にはまだ誰もいない。いつもなら、クラスメイトの半数が教室でお喋りをしたり課題を写したりと、各々今日一日の学校生活の始まりに備えているはずだった。 「……………?」  いつもと違う風景に、戸惑いを隠せない。そういえば、音楽を聴きながら登校していたから何も気にしてはいなかったけれど、さっきまで賑やかだった廊下が急に静かになっている――。 「もしかして、今日、休み?」  一番に思いついたのは、それだった。しかし、曜日を間違えるなんて漫画みたいな勘違いを起こしたことはないし、昨日のHRでも今日が休みだなんてことを言っていた記憶もない。創立記念日は学校が休みになるけれど、その日は今から三ヶ月も先の話だ。学校行事だって、この季節は例年通りであれば何もないはずだった。  というか、さっきまでは廊下に人がいたのだから、学校自体が休みなわけじゃないはずだ。確かに、私は誰かとすれ違っていたのだから。廊下にいた人達はみんな自分の教室に戻ったのだろうか。それならば、何故、この教室だけ人がいないの。 「えー………授業変更で、移動教室とかになったのかなぁ」  とりあえず、一回自分の席に座ろう。それから、タクヤとか、ミナミとかに連絡してみよう。  アイポッドの音楽を止めて、鞄にしまう。教室に足を踏み入れればカタリ、と音が鳴った。
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