第一章 始まりのイベント

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3 やられた、と『彼女』は奥歯を噛みしめる。 『彼女』に落ち度はなかった。 ただ『奴』の力が前代未聞だっただけ。 いや、こんなものは言い訳だろう。力ができる範囲を誰が決めた。それはただの思い込みに過ぎない。『アリエナイ』と思っていたからやられた、それだけだ。 致命的な状況に追い詰められた。 この世界に渦巻いている異様で圧倒的な『流れ』を利用できはするが……漠然とした大きな『流れ』は駄目だ。せめて方向性を整えてくれないと。 (みんな……ごめん) 謝罪に意味はない。 ただ結果のみが広がる。 (吾は、わ、れは……ッ!!) これより始まるのは唯一の希望の処分。 これより始まるのは『奴』が席巻する世界の下準備。 これより始まるのは世界の破滅のプロローグ。 すべては。 ここで決する。 ーーー☆ーーー (なんだよーいいじゃん可愛いキャラ助けるために戦って! ゲームってそういうものだろ!?) カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ、と異様なタイピング速度でキーボードを叩く北沢仁助。 このゲームでのコマンドは自分で設定できる。例えばCで剣を振る、AMで蹴りなど。その組み合わせで動作を決定するのだ。 だから、このゲームは面倒くさい。 ここでトップランカーの常識を見てみよう。 『KN A PJGM WTA MGTAD A GP W』。これで39度右に右足を踏み出し、上から301度の斬撃を振り下ろす、になる。 このように組み合わせによって変化を持たせ、多彩な動きをさせるのだ。 はっきり言おう。かなり面倒くさい。 だからプレイヤーはある程度の『手順』を作る。それにどれだけ柔軟性を持たせるか、が腕の見せ所か。 ……小さな例外はいるが。
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