第一章 始まりのイベント

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ーーー☆ーーー 皆が注目している規格外、小さなアバターは中心から百数メートル(ぐらいのはず)離れた民家に身を隠し、様子を見ていた。 (む、これは面倒っぽそう) 設定では全プレイヤーが所属している王国の王都。そこにある広場には斬首用の台があった。 その周りに数百の兵がいて、そのさらに外側に見学している風を装っているのか多数のNPC(プレイヤーではないキャラ)が。 (兵のステータス基本高いからなあ。オマケにここは王都。レベル200とか出るよなあ) 敵は大きいほうが厄介だろうか? 少なくともこのゲームだとそうではない。 大規模モンスターだと攻撃範囲が広いからそいつらのプレイヤーへの攻撃は『急所判定』に含まれないのだ。 だから。 無駄にぐねぐね動く人型の敵は厄介すぎる。そいつらは的確に急所狙ってくるので。 (兵のサイズだったら絶対急所判定アリ。あれだけ数多いと武器が保たないし、考えなしに倒したら経験値削られまくってえらいことになるよな) いくら低レベルでも最強になれるといっても限度がある。あれだけの数に単騎で突っ込み、囲まれたら、レベル85くらいはないと厳しい。 (レベル200倒したら、一気に10とか20とか削られそうだし、はてさてどうするか) 基本、上にいけばいくだけ必要経験値が増えるのはゲームの常識。加えてこのゲームは100までなら無課金でも比較的すぐに到達でき、そこから必要経験値が一気に増える設定なのだ。 厄介すぎる。 これはいくら何でも厳しい。 『逃げて逃げて逃げまくって必要なモンスターだけ倒す』という得意分野がこの密度だといくら何でも不可能なので、どうしようもない(モンスターの配置や罠など、ゲームの仕様上普通のステージでもほぼ不可能と言われてきた方法なのだが)。 どうしようもない。 それでも諦めたくない。 その無駄な諦めの悪さが彼をここまで押し上げた。無駄に凄まじい才能ひしめく魔境で第二位に到達できるほどのプレイヤーにしてみせた。 だから。 だから! だから!! 「で、どこから攻めんだよ?」 「へ?」 「……正面突破……」 「いや、飛鳥せんぱ……アスカ。それは無謀じゃないっすか?」 『団長、指示を』(←アンノウンの書き込み)。 自然な形で話しかけてきた。 いくら同じ騎士団のメンバーとはいえ、肩が触れるほど近くに接近されるまで気づけないほど考え込んでいたのか。
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