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基本学校までは幼馴染みの少女の肩車で登校する(それはもう激戦に次ぐ激戦の末、この形に落ち着いた)。
つまり毎朝この醜態を晒さないといけないわけで、つまりモデル体型の幼馴染みの上にチビが乗ることで体型の差が強調されるわけで、つまりただの羞恥プレイだった。
「泣きたい……」
「何かございましたか?」
「全部分かって言ってるだろ、お前」
まるで毒沼でも歩いているようだった。ただ歩いているだけでヒットポイントが削られていく。
と、角から出てきた赤髪の不良っぽい少年がそれを見た瞬間吹き出した。
「ぶははっ。チビが郵送されてやがる! こりゃー傑作だなーおいっ」
「出会い頭にそれかよ!! もう見慣れただろうが!!」
「おいおい、いくら身長足りないからってかさ増しして上から喚くんじゃねーよ、チビ助」
「こ、この野郎ォッ!!」
板垣紅蓮。
いくら先生に注意されても赤髪をやめない謎の意地を張り続ける、口調が粗暴、目つきが悪いなど色々あるが、それはただの格好つけであり本物の不良というわけではない。
そんなファッションゴロツキな板垣紅蓮にネチネチ弄られながらも学校についた。下駄箱で降ろされ、クラスが別の幼馴染みと板垣紅蓮とはここで別れる。
……いつも通り、中々幼馴染みが離してくれなかったが。
「朝から疲れた……」
ふらふらと自分の教室に入り、教卓の真ん前という最悪の席に座る北沢仁助。
その隣。
百人中九十人以上が性別を勘違いする中性的な顔立ちの少年、安藤飛鳥が心配そうにこちらを見る。
「……だいじょうぶ……?」
「いつものことだし、もう慣れた」
その微かに揺れ動く目や心配そうな表情は完全に女の子のものなのだが……それを指摘したら泣いちゃうので黙っておく。
肩まで伸びた黒髪やきめ細やかな肌、無駄に色っぽい唇と『女性なら』誰もが羨む外見だが、見た目が当人の望むものにならないのは彼もよく知っているので。
なのだが、せめて彼よりは身長が欲しかった。未だに服装さえ整えれば小学生料金で公共交通機関を利用できるのはおかしいだろう。
「はぁ。おっきくなりたいなあ」
「……私がカッコ良くなれるより難しいんじゃない……?」
「あいつもそうだが、お前も結構キツイこと言うよな」
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