第一章 始まりのイベント

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2 あらゆる神話がごちゃ混ぜになった世界。 ファンタジーの凝縮体とも例えられる異世界『カオス』。そこには魔獣と呼ばれる敵がいて、彼らにしか使えない魔法という力が猛威を振るっていて、人間は絶滅の危機に瀕してした。 人類滅亡。 その未来を変えるための剣こそ、騎士と呼ばれる戦士たちだった。 彼らは世界を、誰かを救うため、極大の邪悪へ立ち向かう。 ……という設定のネットゲーム『アトランティック』に彼らはハマっていた。 アバターの服装やら武器やら外見やらを自由に変更でき、バリエーション・難易度が幅広いステージがあって、多種多様な敵モンスターがいて、FPSのようにキャラクターの視点でファンタジー世界を冒険できて、何よりどのゲームよりも複雑な動作ができる、と人気が出ておかしくないネットゲームなのだが、その『多さ』の割にはそこまで人気は出ていない。 何でもかんでも『多く』、無課金でも低レベルでもやり方次第では最強になれるのに、なぜ人気が出ないのか。 ───単純に難しいのだ。 普通に動かすだけならできる。 だが、複雑な動作を行うには相当のタイピング技術やらが必要で、なおかつ『複雑な動作を使うことを前提に』ステージが設定されているのだ。 難易度の幅は広い。 ただし最低の位置が異様に高いのだ。 たったそれだけ。 そのせいで『世界最高峰のやり込み度だが、世界で一番やりこみたくない』などと言われる始末。 だから、か。 このゲームにはとんでもない奴らが多数生息している。 「俺が最後かー」 始まりの町、スクイナ。 最初、プレイヤーは中世の小規模な町に似たここの中心にある噴水に転送される。 その噴水近くに集まっていたいつもの四人はボイスチャットで各々、 「遅せぇぞ、チビ助」 「……いちゃいちゃしてて、遅れた……?」 「飛鳥先輩って意外と恋話好きですよね」 『待ってた』(アンノウンの書き込み) 「とりあえずバーニングは一発殴らせろ、な?」 『幼馴染みに無理矢理設定された低身長のアバター』が黒マントに黒いズボン、メリケンサック装備(一応結構なレア武器)の筋肉質な男に掴みかかる。 それが板垣紅蓮(バーニング)のアバターである。ちなみに職種は格闘家。騎士なのに他の職種に変更可能って設定どうなってんだ? な状態だが、やり込み度が増えるのはプレイヤーとしては大歓迎である(だが職種800はやりすぎな気もする) 。
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