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「図書委員はさ、文化祭に読書感想文を書いて掲示しなきゃいけないんだよ」
「へぇ・・知らなかった」
谷木は、思わず素で答えた俺の顔をまじまじと見ながら、にこっと笑った。
「読書感想文って、どうしても書けない・・。お願い!手伝って!相原はそんだけ本読んでるんだから、いろいろ知ってるだろう??おすすめの本とかさあ。教えて!」
目の前で拝まれて、俺は少し仰け反った。
「手伝うって・・?」
「だからさ、感想を書きやすい本とか紹介して欲しいんだけど。今いいか?」
「あぁ、う、うん、わかった」
俺は、立ち上がって文学の棚へと足を運んだ。
「いくら感想文が苦手って言っても、誰か好きな作家とか、この中に・・」
振り返ると、いつものお日様笑顔は消えていて、少し怖いくらいの谷木がそこにいた。
「え?あ・・っと・・好きな、作家・・?」
あまりにも顔が近いし、目が真剣だから、言葉に詰まった。
なんだ・・?なんだ・・?なんか変じゃないか?
「相原、お前さあ、なんでそんなに色が白いんだ?」
「え!?いや・・・そ、それは・・よく知らないけど・・俺、体弱いし、あんまり外でないし・・」
会話変じゃないか?読書感想文じゃないのか?でも、俺から話題を変えられるような雰囲気じゃなくて・・。
しどろもどろで、答える俺に谷木はふっと、息を吐き出した。
「お前って、白いキノコみたいだな~。ほら、何て名前だっけ?白くて細いきのこ」
「エノキ?」
「そうそう、あれ!お前、エノキだわ!!ははつ!」
「うっ、うるさい!本、選ぶんじゃなかったのかよ!もう!勝手にしろよ!」
ったくバカにして!
俺が棚から離れようとしたところで
「待てよ・・俺エノキ好きだから・・毎日だって食べるから。機嫌なおせよ」
「な、なに?」
握られた手首から心臓が飛び出しそう。いや違う、こういう時は目から飛び出すのか・・いやいや・・本来心臓が飛び出すには、まずはろっ骨を割って・・・。
違う。そんな話じゃない。俺、何言われた?エノキが好き?え?なんだ、それ?
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