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「大丈夫か?相原?目、泳いでんぞ。手、震えてんのか?」
握ってた手首を離して、今度は指同士を絡めてきた。
ゾクッ~っと背中に電気が走って、体温が一気に上昇したのが分かった。
「あ・・エノキが茹で上がってタコになった。お前、可愛いなあ・・・」
「可愛いって、おい、バカにしやがって」
俺が手を振り回しても、からんだ指は離れることなく、それどころかさっきよりも固く握りあってるみたいに結ばれた。
何も言えなくて固まる俺のおでこに、自分のおでこを付けて、熱を測るみたいな姿勢のまま、もう片方の指を俺の後ろ髪に絡ませた。
「あのさ、俺がなんで図書委員になったか知ってる?図書室の地縛霊に恋したからだよ」
顔が近すぎて、ぼんやりにしか見えない顔も、まるで熱があるみたいに赤く染まって熱くなっていた。
二人の間にあるわずかな隙間は、お互いの吐息と顔から発する熱でモクモクと湯気でも上がりそうだ。
もぉダメだ。鼻血でそ・・・そう思った時だった。
「うわぁ~っつ・・・痛っつ・・・」
急に腹が痛くなった。その痛みはキリキリと深く刺し込んできて、俺はその場に倒れ込んだ。
「相原?相原?」
谷木の声が聞こえる・・あぁ~俺死ぬのかな・・。
「や、ぎ・・俺死ぬのかも・・おれ、幸せだった。ありがとう・・・」
「おい!相原、しっかりしろ!先生!先生!」
谷木の声が遠くに聞こえた。
そういえばさぁ、今日は朝から嫌な予感してたんだよ。
正岡子規が死んだ日なんだな・・って朝からブルーになってたんだよ。
俺、正岡子規と命日一緒になるよ。谷木、俺のこと忘れないでくれよな・・・・。
次に目を覚ました時、俺の顔を母さんが覗き込んでいた。
「母さん?あれ?俺生きてんのか?」
母さんは、はぁぁぁと、大きく息を吐き出して
「マサル、あんたね、盲腸だったの。しかも、緊急手術したくらいに、ひどかったのよ。
良かったわねぇ。もう切ったから大丈夫だって」
よほど安心したのか、俺の腹の上に体をうつ伏せた。
「ぐあ!母さん!痛い!痛い!死ぬ!!」
「あら、ごめんなさい。ほほほっ。
そういえば、マサル、あんた死ぬ死ぬ言って倒れたでしょ。同級生の子がそりゃあ、心配して大変だったのよ。
明日来てくれるって。ちゃんとお礼言いなさいよ」
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