転がり落ちた死体

7/99
前へ
/369ページ
次へ
   子供の頃から不思議な能力があった。  いや、親指にあれが出来てからか。  最初は薄い線だったのが、やがてはっきりと。  両の親指に、仏眼という目のようなものが出来た。  霊感が強い人間に出来るものだと言う。  しかし、自分のそれは少し変わっていて、目の中に、赤い瞳のような痣があるのだ。  それからだ。  相手の手を握ると、その人物が罪を犯しているかどうかわかるようになったのは。  ただ、何故、そんなことをしたのか。  なんの犯罪を犯したのかはわからない。  だから、募集した。 『推理できる助手、募集中。  仏眼探偵事務所』  なんて他力本願な、と張り紙を見てやってきた助手が睨む。  顔で採用したわけではないが、深鈴は、かなり可愛い顔立ちをしている。  就職活動中に、『名古屋のコインロッカーまで一万円でバッグを運んでくれる人募集』とか書いている、ろくでもない手書きのチラシの下にあった、うちの張り紙を見てきてくれた有難い存在だ。  おかげさまで、本当に楽出来ている、と晴比古は思っていた。
/369ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1390人が本棚に入れています
本棚に追加