転がり落ちた死体

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   やっと乗ったな、と亮灯(あきほ)は思った。  仏眼探偵を名乗る、仕事をしているんだかいないんだか――。  いや、していない気がする男は、新幹線に乗っても、まだうつらうつらとしていた。  窓に寄りかかればいいのに、変に男気を出して、助手に窓際の席を譲ったものだから、肘掛に頬杖をつき、眠るはめになったようだった。  さりげなく彼を窺っていたのだが、扉が開き、入ってきた男とぶつかりそうになってしまう。 「すみません」 と亮灯は頭を下げ、そそくさとその車両を出た。
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