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そう恨みがましく睨んでみたが、深鈴は笑顔で言ってくる。
「どうぞ、深鈴って、呼んでください。
私が先生を深い森から導きますよー」
「今、お前が俺をどん底につきおとしてるんだが……」
「えっ。
なんでですか?」
お前にフラれたからだよっ、と思ったが大人げないので言わなかった。
それに、まだこいつらが、遠距離恋愛を続けるというのなら、つけ入る隙はあるはず。
いつか俺も、亮灯と呼んでやるっ、という低い目標を掲げ、目を閉じようとしたとき、すぐ後ろに連結している車両から、悲鳴が聞こえてきた。
亮灯は本を置き、自分を乗り越えて、行ってしまう。
「こらっ」
危ないだろうがっ、と思っていると、飛んで戻ってきた亮灯が叫んだ。
「先生、人が凍って死んでますっ」
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