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(そうか、わかった!鏡を合わせると煙が出るんだ!)
それがどういう意味を持つのかはわからないまま、私は何度かその動作を繰り返した。
間違いない…
そう確信した時、合わせ鏡にまつわる伝説を思い出した。
特定の時間に鏡を合わせると、魔界に通じる…おかしな者が現れる…映らないはずのものが映る…
すべて不気味な話ばかりだ。
だが、恐怖心よりも好奇心の方が勝った。
この世界そのものが狂気なのだ。
何が出て来ても、今より状況が悪くなることなどないだろう。
私は、地面を少し掘って片方の鏡を立てると、そこから少し離れた場所に同じように鏡を立てた。
思った通り、向かい合わせた二つの鏡面から、先程よりもずっと濃い真っ白な煙が噴き出した。
出て来たのは今度もやはり煙だけで、おかしな物が飛び出て来ることはなかった。
白い煙はお互いの鏡面に向かって流れ、中央付近で一際大きな煙になった。
呆然と煙をみつめる私は、そのうち、また馬鹿馬鹿しい妄想にかられた。
この煙の向こうに、どこか違う世界に通じる…そう扉のようなものがあれば良いのに…と。
その時、私は煙の流れが俄かに変わった事に気が付いた。
もやもやと流れていた煙が次第に長方形に変わっているのだ。
(扉だ……!)
私の胸は高まった。
先程はまるで効果はなかったというのに、今度はまた私の想い通りに運んでいる。
みるみるうちに煙は、白い扉に模られた。
そこにちゃんと鍵穴の付いたドアノブまでがあることに、私は思わず失笑していた。
期待と不安を胸に、私はノブに手を伸ばす。
それは、煙であるはずなのに、ちゃんと実感のある感触をしていた。
ゆっくりと私はノブを回す…
カチャリと軽い音がして開かれた先は、絶望的な闇だった。
そのことで躊躇する私のことを気に留める様子もなく、何か見えない強い力で私は闇の中に引き込まれた。
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