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(……一体どうなってるんだ…)
時計がなくとも、日が翳らなくとも、私が目を覚ましてから相当長い時間が経ってるであろうことは、身体の疲労の度合いから容易にうかがうことが出来た。
しかし、どれほど歩いても、周りの景色は一向に変わることはなかった。
白の世界はどこまでも延々と続き、ざわめく心を抑えこむのももうそろそろ限界に近付いているような気がした。
私は足を停め、目を閉じて大きく深呼吸をする。
せめて、水でもあれば一息つけるのに…そう考えた時だった。
私は目の端で何かがきらりと光った事に気が付いた。
この世界で初めて「白」以外のものをみつけたのだ。
逸る気持ちを抑えきれず、私はその方向へ走り出した。
そこにあったものは小さな泉…いや、水溜りのようなものだった。
私はその水が安全なものかどうかも考えず手を伸ばし、両手ですくいごくごくと流しこんだ。
ひんやりとして癖のない美味い水だった。
しばらく経っても何事もない。
毒が入っているようには思えなかった。
水を飲むと、ほんの少し気分が晴れた。
何よりもこの世界に「白」以外のもので動くものがあることが、私の気持ちをずいぶんと楽にさせてくれた。
私は水溜まりの傍に腰を降ろし、気まぐれに水面を叩いては水面を揺り動かし、小さな水の音をに耳を傾けた。
馬鹿馬鹿しいことだが、それもまた気持ちを落ちつける手段のひとつになっていた。
水溜りの水はとても澄んだもので、揺らぎのなくなった水面はまるで鏡のようだった。
私はふとその水鏡に自分の顔を映した。
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