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「あ……」
その瞬間、水鏡はまるで氷が張ったように固まった。
恐る恐る手を伸ばすと、それは冷たくはなく、凍ったわけではないことがわかった。
そこにはさっきよりもずっとはっきりと私の顔が映りこんでいた。
「……鏡……?」
そう、それは、まさしく鏡に変わっていたのだ。
私はさっき確かにこの水溜りの水を飲んだ。
なのに、なぜ、水面が鏡に?
何かおかしな所はないかと、鏡の隅々に顔を近付け注意深く観察した。
「あっ!」
ほんの一瞬、身体のバランスが崩れ、私は咄嗟に鏡の上に手を着いた。
それと同時に、鏡は乾いた音を立て、真ん中から二つに割れた。
鏡が割れると理由もなく不安な気持ちにかられる。
昔からの言い伝えやまやかしめいたことを聞きすぎたせいなのか、得体の知れない恐怖を感じ、私はあたりを見渡した。
しかし、周りには何一つ変わった所はみつからない。
それでもまだ不安は拭い去れなかった。
私は、ふと割れた鏡に手を伸ばした。
鏡の下がどうなってるか知りたかったのだ。
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