第2章 

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 そこに行こうとして、男がぶつかった。  正確には男が不自然にぶつかって来たのだが、なんとなく財布を探すと綺麗に無くなっていた。  即座に追いかけようとして男が人ごみに消えていく。  だが逃がすつもりも無い。 「“風”よ」  シズは小さく呪文を唱えて、ほんの少し人ごみに通り道を作る。それこそ魔法を使ったか使わないかのレベルで、都市内での魔法の使用に抵触しない程度の力だ。   その道をシズは疾走する。昔よりも走れなくなっている気はするが、男に追いつくにはそれで十分だった。 「!、何!」  男が路地に入り込む。路地は格段人通りが少ない。  より人通りの少ない場所に入り込んで男が立ち止まった。横からさらに三人歩で別の男が出てきて、にやりと笑った。  それを見てシズは即座に財布を持った男にとび蹴りを加えた。
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