第2章 

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ゴスッ  全員を相手にする義理などシズにはない。  そもそも勝てるか……本気でやれば勝てるが面倒ごとは起こしたくない。先手必勝とばかりに蹴りを加えるのみで、財布を取り戻すには十分なのだ。  案の定、ポロリと男の手から財布が落ちるのを確認して、財布を右手で掴み今度はきびすを返して逃げる。 「こら、待て!」  待てと言われて待つ馬鹿は居ない。後はただひたすら逃げるのみなのだが……。  石畳の道を駆けること数分。  迷った。  そもそもここに来たのは今日が初めてで、ここがどこかも分からない。  スリの男達の声が聞こえた。 ――まずい、追いつかれる。
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