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「あ・・ヤギだ」
少し丘をあがったところに、白い大きなヤギが草をむしゃむしゃと食べているのが見えた。
近づいてよく見ると、ヤギは繋がれていて、ヤギの側にはおんぼろの掘っ立て小屋が立っていた。掘っ立て小屋の入口には木の看板がくっついていて、そこには墨で書かれたような質感で『ハイジ壮』とあった。
え!?ここ誰か住んでんの??
第一印象はこれだった。
だって・・・・ホントにおんぼろで・・いや・・まあ・・住民には申し訳ないんだけど・・。
確かに、窓ガラスが割れてるとか、蜘蛛の巣で覆われてるとか・・そういうわけじゃなくて・・なんとも修飾しづらいんだけど・・。
とにかくおんぼろなんだよなあ・・。
私がそのハイジ壮なる掘っ立て小屋をしげしげと眺めていると、近くから
「あぶない!!」
ガシッツ!!
声と同時に背中に衝撃と激痛が走った。
「くっつ、いった・・・・」
私は、目の前の草むらに倒されて、草の中に顔をうずめた。
「危ないって!早く逃げろ」
今度はもっと近くから声がする。
「え?なに?なに?」
寝転んだままキョロキョロすると、後ろの生き物が視界に入った。
はっと、振り向くと、あの白い生き物が、自慢の角を私に向けて今まさに追撃しようと
二本足で立ちあがっているところだった。
「ひぃぃぃぃ」
いや・・声しか出ませんって・・ただでさえ寝っころがってんのに・・。
しかも腰と背中に激痛があって、とっさに逃げられるわけないじゃんか!
誰に言い訳しているのかわからないけど、その巨大なヤギの姿、しかも超攻撃態勢みたら、体が固まって変な声が漏れるだけだ。
もうダメだ!
目をつぶって、固まった私の腕をすごい力がぐうーんと引っ張って、ヤギの攻撃は空振りに終わった。
ヤギは、空振りに終わると、何事もなかったかのようにまた草をむしゃむしゃ食べていた。
「なに?なんなの??」
唖然とする私の頭上から
「ユキは、えらい凶暴なやつだからな・・絶対背中を向けたらダメなんだよ。
あ・・大丈夫か?」
膝に手をついて覗き込んできた人は、Tシャツにジャージ姿で長靴を履いているおじさん?いや・・おじさんじゃないな・・年上の男の人だった。
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