タコの恋

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 農場には、なんと塚田先輩が、助手として待機していた。  私のテンションは一気に跳ね上がった!  先輩は今日も薄汚れたジャージ姿だったけど、私の眼にはモード界の王子様のように恰好良く映っていた。  私は、さりげなく塚田先輩に近寄った。  塚田先輩は、私をチラリと見て、あぁ~って顔で笑ってくれた。  覚えていてくれた!?  私は嬉しくて、少し照れながらも会釈した。  あ~こんなところで会えるなんて、もお~神様の思し召しよ!  食パン咥えて、転校生と鉢合わせくらいの奇跡よ!  私たちのグループが、ヘチマの棚作りに、てんやわんやしていると、塚田先輩がやって来た。 「うまく作れたか~?」  メインで働いてくれている男子生徒たちに、ここはこうした方が良いとか、ここを組むと後で楽だからとかアドバイスして、私たち女子にはヘチマの種の蒔き方なんかを説明してくれた。  先輩とは、2歳しか年は変わらないはずなのに、とても大人に感じた。  もう、先生みたいにいろんなことを知っているし、いろんなことができる。  この間、ヤギのところで会った時よりも、すごく遠い存在に感じて少し寂しかった。  授業が終わって、後片付けをしている塚田先輩に、目立つグループの女の子達が話しかけていた。  何を話しているのかは、分からないけど 「塚ちゃん先生~」  なんて、呼ばれている塚田先輩のはにかんだ横顔が見えて、遠いどころが、全く知らない他人みたいで(そもそも、そんなに親しくはなかったけれど・・)私は、目をそむけた。  学校の帰り道、ユキに会いたくなって、私はまたあの丘を登った。  ユキは相変わらず呑気に草を食べている。  私は、ユキに背中を向けないように気を付けながら、ユキが繋がれている紐を緩めて、遠くの草も食べられるように移動させた。 「おっ!サンキューな!それ、毎日移動させてやんなきゃいけないんだよ。助かったわ」  後ろから、声が聞こえて振り向くと、塚田先輩が笑っていた。 「あ・・・うそ・・先輩・・」  まさか、会えるとは思ってなくて、感激に震えていると 「おい!危ないって!」  声ともに、背中に衝撃が・・・ユキの手痛い攻撃を食らった。  さすがに二度目、頭突きの衝撃で草むらに投げ出されはしたが、急いで腹這いになって逃げうせることができた。  
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