鏡の中と外

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* レオナールは、居間の窓からぼんやりと外をみつめていた。 窓の外は鉛色の空… 天気さえも、レオナールの意のままに出来るというのに、彼は澄み切った空よりもこういう空の色を好んでいた。 「レオナール…良かったら、お茶を一杯いただけないかな?」 「あぁ、お安い御用だ。」 レオナールがそう言うと、テーブルの上には温かな湯気の立ち上るお茶が現れた。 「相変わらず、準備が早いね。 うちにも君みたいな使用人がいてくれたら助かるのだけれど……」 「その代わり、給金は高いぞ。」 二人は軽口を叩きながら、今出て来たばかりのお茶をすすった。 「私は、酒の方が良いのだが…」 「あいにくと僕は下戸でね。」 レオナールは、わずかに口端を上げた。 「……どうした? 何か、困り事か?」 「……困り事って程じゃないんだけど…… ここから出られる方法なんて、あるのかな?」 「戻りたくなったのか?」 「……そういうわけじゃないんだけど……やっておくべき事を思い出したんだ。」 「何だ?」 「うん…こう見えても僕はそれなりに資産を持ってる。 僕がいなくなったら、それを目当てに親戚達が集まって来ると思うんだ。 だから、僕の資産はすべてスコットに譲るって…それを認めておきたいと思ってね…」 レオナールはアラステアをみつめながら、ゆっくりとお茶をすすった。 「お前は、私が好んでこんな所にいると思っているのか?」 「ここがそれほど悪い場所だとは思わないよ。 ここでは何もかも、君の意のままに出来るじゃないか。 言ってみれば、君は神のような存在だ。」 レオナールは、アラステアの言葉に失笑する。 「私は神ではない。 ただの囚人だ。 どれ程焦がれようと、この世界から出られることのない惨めな囚人だ。」 「……ここから出る方法はない…と?」 「あるのなら、私はこんな所にはいない。」 「……そう。」 アラステアは、カップに残ったお茶を飲み干した。 「ご馳走様。 この次は、オレンジのカリソンもお願いするよ。」 そう言うと、アラステアは居間を後にした。
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