鏡の中と外

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* 「おまえは本当に強情だな。」 レオナールは、アラステアをひょいと抱き上げ、長椅子の上にそっと寝かせた。 「……どうしても戻りたいのか?」 「理由は前に言っただろ?」 「スコットは、お前の財産等欲しがらないだろうがな。」 「それだけじゃない。 僕は、この寝巻きとガウンしかないからね。」 「そんなものなら私が…」 アラステアはゆっくりと首を振る。 「僕は子供の頃からメイソンの仕立てたものしか着ないんだ。」 「……なるほど。」 レオナールは、穏やかに微笑んだ。 「アラステア……もしも、元の世界に戻れたら……お前はこの鏡をどうするつもりだ?」 「どうもしないよ。」 「なぜだ?ここにお前の愛しいフィリスはいない。 いるのはこの私だけなのだぞ。」 「……そうだったね。 ここに僕の愛しい人はいない。 いるのは…………意固地な友人だけだ。」 レオナールの瞳が一瞬大きく見開かれ、その視線は急に落ち着き失い、宙を彷徨う。 「アラステア……私は……」 「君も一緒に戻る?」 「私はここから出られないと言っただろう。」 「……僕は諦めないよ。」 「……そうか、メイソンの仕立てた服はここでは手に入らんからな。」 アラステアは小さく笑ってゆっくりと身体を起こした。 「そういうこと。 さて…それじゃあ……」 「やめておけ。」 「僕は諦めが悪いんだ。」 「そうじゃない。 たまには違う運動にしてみたらどうなんだ?」 「……え?」 レオナールは、立ち上がり、視線を向かい側の壁に向けた。 そこには、スコットの持ち帰った鏡が掛けてある。 アラステアは、レオナールの意図を汲み取った。 「スコットの前でも、フィリスの時のように素直になれたなら、きっともっと仲良くなれるだろうにな。」 「……レオ…… 君は、戻らないの?」 「愛称で呼ばれたのはずいぶんと久しぶりだ。照れくさいものだな。 何度も言っているだろう…私は戻りたくても戻れないのだ。 だが、おまえは違う。」 「え?」 「アラステア、今更なんだが……フィリスのこと……騙してすまなかったな。」 「恥ずかしいから、その話はやめておくれよ。 ねぇ、レオ…いつか君のことを話してくれるかい?」
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