side スコット

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* 「いえ、そのようなことはありませんが……」 あれから、アラステアは体調が良くないと言って、部屋にこもりがちになった。 それは、例えば僕と話したくないからとかいう口実等ではなく、本当に体調が良くない様子だった。 その間、僕はアラステアの好きな人について、使用人達に彼の行動について情報を聞き込んだが、彼はいつもと特に変わりなく、外出の機会もそう増えてなければ、その際には必ず誰かが付き添っているということだった。 そんな彼が、誰に恋をしたというのだろう? どこでどうやって出会い、恋をする程親しくなれるというのだろう? とても落ち着かない気持ちだった。 彼が嘘を吐くはずはない。 その想いには、欠片程の揺らぎもなかった。 けれど……何か例えようのない不安が胸に渦巻き、その渦は時と共にどんどん大きく黒く広がっていくような気がした。 (どうしよう……) 気持ちはただ焦るばかり。 そんなある日のこと…… 「スコット…今日は気分も良いし、薔薇を見に行こうか。」 アラステアの方から、そんな誘いがあった。 いつもと同じように冷静な表情……僕には彼の心の中は読み取れない。 「良いね。 僕もまた見たいと思ってたんだ。」 * 「ここもなかなか良いだろう?」 当然、庭の薔薇園に行くのかと思いきや、すぐに馬車が準備され、着いた所は静かな湖のほとりだった。 「こっちだよ。」 アラステアは、後ろも振り返らずずんずんと歩いていく。 きっと、何度も来たことがあるのだろう。 (彼は好きな人とももしかしたらここで会ってたのか?) 使用人は馬車の傍で待っている。 アラステアがそれほど長い時間、彼らを待たせたという話は聞かなかったけれど…… 「ほら、ここだよ。綺麗だろう?」 考え事をしているうちに、いつの間にかアラステアのお気に入りの場所に着いていた。
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