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「俺が手加減知らずだからだよ。」
誰でもないししょーがそう答えた。
それに皆が頷く。
「まあ僕も存外手加減知らずなんですけどね!」
「確かに総司君も強いが士君もなかなかに強くてね……」
「こう言ってる山南さんも強いんだよ?なんせ北辰一刀流の免許皆伝!」
「がはは、そういう源さんも強いじゃないか!」
……ししょーの修業が厳しいと思ったわたしは別段甘えていたわけではなかったらしい。
確かに辛かったし、痣もできておばさんにも心配されもしたが……
「でも!わたしのこれからの道のりには危険が付きまとうので!だから、だからししょーは…」
なんて言葉にしたらいいかわかんなかったけど、伝えたいことがあるのに。
悔しくてキュッと唇を噛んでたら上から温もりが降りてくる。
「ん。ありがとう。」
「「「士のあんな顔みたことねえ……」」」
三馬鹿の声を聴いて顔を上げようとしたわたしはグイッと押さえつけられて見ることができなかった。
そんな空気をガラリと変えたのは今まで一言も発していなかった土方さんだ。
「おい、てめぇ。俺と勝負しろ。」
「は?」
ニヤリとして楽しげに口角を上げた。
目はギラリと光り獲物を見つけた狼のような目だった。
「俺は言っただろう?弱い奴は嫌ぇなんだよ。しばらくここにいるんだったらせめて道場の名を汚さない程度に強くなきゃ。それでなかったら勝手場にすっこんでろ。」
これは所謂果たし状というものなのか。
こう見えてもわたしは負けず嫌いだ。
ししょーにも負けるときは命果てた時だと何回も教わった。それまで気を抜くなと。
「ふふふ…いいですよ。どうやら力量をはかる術を持ち合わせてないようですね。」
自分でも口角が上がるのがわかった。
全身の血がドクンドクンといつもより速くめぐってるように感じる。
その様子に三馬鹿を始めししょーまでも鳥肌が立ったらしい。
あとでご丁寧にも総司君が教えてくれた。
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