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「なんだァお前、士だったのかよ……。」
くそ、騙されたなんて言ってるのは土方歳三さんというらしい。
普段は実家の薬を売り歩いてその先にある道場で道場を潰しては歩いていたら試衛館に流れ着いたらしい。
……この人ししょー並みにめちゃくちゃな人だ!
「歳さん、近藤さんの話聞いてなかったんですか?今日つかさん達が泊りに来るって。」
「んァ・そんな話あったようななかったような……。」
「ああ!もうお年を召してるから記憶に残ってないんですね!あんなに大事な近藤さんの話を忘れるなんて!」
顔に似合わない毒舌を振りまきながらわたしたちを案内してくれてるのは沖田総司さん。
歳はどうやらわたしと近いという勘はあってたようだ。
物腰も柔らかい。ただししょーと同じ類の笑みを浮かべるのはちょっと怖い。
……仲良くできたらいいな。
「うるっせェェェェェ!てめェそれ以上言ったら―――「梅の花~一輪咲いても梅は梅~」総司ィィィィィ!たたっ斬る!」
わたしとししょーの思いは久しぶりに同調したらしい。
―――嵐が去った。
文字通り喧嘩が激化して総司君を追いかけて土方さんがいなくなった。
そして取り残されたわたしたち……。
「ししょー、どうしましょう。」
「とりあえず、そこで覗いている三人組に聞いてみるとしようか。」
ししょーが涼やかな視線を送った先には三人の男が―――本人たちは隠れているつもりなのだろうが―――襖越しにこちらを見ている。
ししょーと目があったらしい一番年少らしい少年がひょこっと顔を出してパチパチと瞬きをして。
転んだ。
「馬鹿……?」
思わず呟いてしまったわたしは悪くないと思う。
ししょーも同じこと言ったらしい。
「馬鹿だとぉ!?久しぶりの再会にそれはねぇだろ!士!」
「あははは、愛が故だよ。さてそこの二人の馬鹿も出てきてさっさと案内してくれないかな?」
「「「そういえば、こいつ総司と同類だった。」」」
拝啓、おばさん。
そうそうにこの先の旅路が不安になってきた今日この頃です。
わたしは上手くやっていけるのでしょうか。
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