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「全く、総司君は近藤さんの話しか聞かないと思ったら……。案内ぐらいきちんとしてくださいよ?」
「「……はい、ずみません。」」
今、源さんの愛の拳骨もとい痛いお仕置きが総司君と…何故か土方さんに降り注いだ。
「いてぇ……。」
「当たり前です。痛くしたんですから。だいたい君は年上でしょう。全くいつもいつも……」
源さんと土方さんが兄弟に見えてきた。
悪戯していて怒られている弟みたい。
思わず笑ってしまったら源さんの肩越しに土方が睨んできた。
…なにこれ怖い。
そんな中、襖が開いて二人の男の人が入ってきた。
一人はちょっと厳めしい顔の、もう一人はとても落ち着いた雰囲気をまとった人だった。
「おいおい、源さん。これはどうしたことだい?!」
「ああ、近藤さん。いやなにこいつらが近藤さんの頼みを忘れていて士君の迎えにいかなかったんだ。近藤さんからも何か言っておくれよ。」
お手上げだ、というように手のひらをひらひら振った。
「はははは、源さんもそれは大変でしたね。」
「笑ってないで山南さんも何か言ってくださいよ。特に歳君は君には逆らえない。」
「はァ!?馬鹿言え!んなわけあるか!」
聞き捨てならんというように土方さんが食って掛かる。
それに背中に黒い靄を宿した山南さんが笑顔で論破していた。
…やはり只者ではなかった。
「総司、この頼みはね君にだから頼んだんだ。これからはしっかりとよろしく頼むよ。」
「はい、近藤さん!今日はすみませんでした!」
そんなやり取りを聞いて源さんは甘いんだから…と嘆息していたけど結局はみんな総司君に甘いらしい。
ひとしきり話してから近藤さんはこちらに向き直った。
話し方などはとてもおおらかで気前のいい人だとすぐに感じた。
「すまんなあ・旅路で疲れているというのに。いろいろと手間取ってしまった…。久しぶりだね、士君。」
「はい・近藤先生。」
うんうんと満足げに頷いている近藤さんはふとわたしのほうを見た。
「おや?この子が君の言ってたお連れさんかい?」
「はいそうです。」
「そうかそうか。こんな遠くまでご苦労様。お名前は?」
「はい!わたしの名前は……あ。」
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