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***
「おはよう、”おりん”。」
髪の毛が少し引っ張られる気配がして目が覚める。
間近にししょーの顔があり、涼やかな声で挨拶をしてくる。
髪の毛の違和感の正体はししょーがわたしの髪を弄んでいたためらしい。
「!?……おっおはようございます…。」
それにしても近い……。
いくら男装してるからって中身は女子なのだから恥ずかしいのには変わりないのだ。
クスクスと笑っているししょーは恐らく―――いや確実に楽しんでいる。
「ああ・ほら、早く起きて身支度しなさい。」
俺はあっち向いているから。
そう言って壁のほうを向くししょーに感謝しながら素早く着替えた。
「もういいです。」
「ん。……こっちおいで”おりん”。」
不思議に思ってそばに寄ると手を引かれた。
どうやら髪を結ってくれるらしかった。ししょーは本当に器用でなんでもそつなくこなす。
ちょっとうらやましい。
「というかししょー。わたしはここでは”リョウマ”ですよ?」
「いいんだよ。俺たち二人の時はお前は”おりん”だ。」
なんて目元を涼やかに細めて笑うものだから思わず俯いたのは仕方ないことだと思う。
ししょーは平助君が広間に呼びに来るまで始終笑っていたのだった。
***
「つかよーリョウマ、ほんとに士の弟子なんかー?」
もぐもぐとご飯を食べながらそう話題を振った平助君を皮切りにあちこちから話が飛んでくる。
「本当ですよ?」
「ひぇー!おっま、よくそいつの弟子入りしようとなんて思ったなあ!」
感心したように新八さんが頷き……左之さんのおかずを掠め取る。
それに気づかない左之さんが続けた。
「しっかしなあ……士が師匠なんてこりゃ明日には槍が降るぞ…」
「ははは、失礼だね?三馬鹿。」
「「「ずみまぜん」」」
「どうして皆さんそんなに驚くんですか?」
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