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「皮肉なものね……」
ユズナはつぶやいた。
「実は、クナ皇国に魔導の力の一つを奪われたという報せが入ったのです。私のもう一つの使命は、それを調べることです。あなた方に手伝っていただきたいのは、そちらの方なのです」
「その奪われた魔導の力、というのは、目に見えるものなのね?」
「力そのものは、目に見えるものとは限りません。ただ、力を発揮するには、様々な道具立てが必要です」
ユズナは顎に手を当てて、考えた。
「それは、願いを叶える、茶瓶の精の話みたいなものかしら?」
「茶瓶の精?」
「茶瓶を擦ると、精霊が出て来て、なんでも願いを叶えてくれるの。三つだけね。死者を生き返らせることと、願いを三つより多くすることは出来ないけれど」
「おとぎ話と一緒にしてもらっては困ります……ですが、まあ、ごく簡単に言えばそういうことかも知れません。我々は魔導具と呼んでいますが……」
「魔導具?一体、どんな物なの?」
「力をお貸しいただけるのならば、お話しします」
「親書の方は、どうするつもりなの?」
「私もまず、親書の方を届けるつもりでした……公子に会えば、魔導具の略奪についても、何かしら手がかりが掴めるかも知れないと思ったからです……」
そしてオビトが今日の朝、供を連れて公子への目通りを願いに公邸へ行くと、後で迎えの使いを寄こすと言われたのだった。それを信じて一旦宿へ引き返したところ、道の途中で刺客に襲われたのだという。
「私の供は殺され、私だけがどうにか逃げ延びた次第です」
その後、オビトは港でウミワラジの騒ぎに遭遇した。ユズナとシオンの活躍を見た彼は、二人を金で雇うことが出来ないかと考えたのであった。
「刺客は、公子の仕業だと思うの?」
ユズナの問いに、オビトは首を横に振った。
「私は主の名を告げました。それを知りながら、会うことも無しに命を狙うとは思えないのですが……魔導具の略奪について後ろ暗いところがあるとすれば、そうするかも知れません。だからまず先に、魔導具のことを調べようと思うのです。もしかしたら、刺客の正体を掴むことが出来るかも知れない」
「刺客について、何でもいいから、気が付いたことを聞かせて欲しいわ」
「刺客は四人いました。クナの装束を身に纏っていて、顔は布で覆っていました。あとは……何しろ逃げるのが精一杯で……」
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