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「あなたも短剣は使えるようだけど、あなたよりも強かった?得物は何を?」
「一人一人の腕は私と同じくらいかも知れませんが、私の供は武人ではありませんでしたし、四人が相手では……得物は四人とも短剣でした、私と同じような」
「そう……どう思う?シオン」
「さあ……確かなのは、我々には関係の無い話だということかな」
シオンの素っ気ない言葉に、オビトは口を曲げた。それから、ユズナにすがるような視線を向けた。
ユズナは言った。
「そうね、シオンの言うとおりかも知れないわ……」
オビトはため息をつき、首を振った。失望と、後悔とが入り交じった表情をしている。
「せっかく頼りにしていただいたのだけど、魔導具とやらを探すのは、お断りするわ。クリミア帝国と、クナ皇国のどちらにも荷担したくはないの」
「分かりました……」
オビトは席を立った。しかしまだ、ユズナは言葉を続けた。
「でも、親書を届けるのは、力になれるかも知れないわ。もしもあなたの主が、本当に両国の間の平和を望んでいて、その親書を届けることが、戦を避けることに繋がるのならね。そういうことで、どうかしら?」
オビトは立ったまま、少しの間思案して、言った。
「それは、願ってもないことです。しかし、そちらの方がより危険な仕事になりますよ。お二人の腕前を頼って来たとはいえ、わざわざ刺客の手の内に飛び込むようなことをさせるのは気が引けます……」
「私は、刺客を放ったのは公子ではないと思うの。だって、あなたを殺すのなら、屋敷の中に招いてからそうする方が、確実ではないかしら?」
「そうかも知れません」
「私は、あなたを公子に会わせたくない者の仕業だと思うの。だから、私とシオンの二人だけで親書を運べば、刺客も気が付かないのではないかしら?」
「最初は気が付かなくとも、何かのきっかけでクリミアの使いだとその者に知られてしまえば、結局は私と同じ目に会うでしょう」
「刺客は四人……二人で渡り合えないかしら。ねえシオン?」
シオンは言った。
「ユズナがそう言うなら、何とかしよう」
ユズナは微笑んだ。
「ありがとう、シオン」
ユズナの提案に、オビトは考えながら一つ深い息を吐いた。親書を人の手に預けるのは、主の命令に対する自分の責任を放棄することになるような気もする。しかし、ユズナの言うことは筋が通っていたし、何より二人を頼って来たのは自分の方なのだ……。
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