美女にはご用心

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平成の時代になっても幽霊というものは人々の中に存在している。 それは畏怖の念からか死んだ者がこの世に未練を残したまま漂っている姿なのかは分からない。 見える人には見えるが、見えない人には全くと言っていい程見えないのだ。 だが、今からお話しする物語は、一人の男の罪により一人の女性が非業の死を遂げてしまう。 やがてその女性の思いが怨念となって男たちを死の淵へと追いやっていくのである。 京都の郊外の団地に住んでいる青木治30歳、良い年をして未だに定職に就かずに日雇い労働者として働いている。 大学を出て初めの頃は就職活動にもいそしんだが、成績もさほど優秀でもなく根気がないために、やっと入った会社も人間関係の悪化からすぐに止めてしまう。 次の会社に勤めるがやはり長続きしない。 お金がないから親と一緒に暮らしている。 親からは毎日、「定職について早く結婚しなさい」と毎日言われているが、今どき日雇い労働者の治と付き合おうと言う女性なんかいるわけもないと治は思っていた。
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