14人が本棚に入れています
本棚に追加
教室の戸を開けたら、そこには。
加瀬がいた。
誰もいない朝の教室の中。
全開の窓に片足を乗せるようにして腰掛け、彼はただ外を見つめていた。
優しくて薄暗い光が、彼を包んでいる。
物憂げな横顔に、胸が痛む。
「加瀬」
出来るだけ彼を脅かさないよう、そっと声をかける。
彼はわたしが教室にいたことに今気づいたらしく、はっとした様子で私を振り返った。
「あ、西宮。おはよ」
「おはよ。……そこ、危ないよ」
「だってここ、よく見えんだもん」
グラウンド、と言って彼がまた外へと視線を戻す。
わたしは何も言わない。
彼も何も言わない。
朝の部活の声が、教室まで届く。
女子テニス部。
野球部。
ソフトボール部。
サッカー部。
最初のコメントを投稿しよう!