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「うっし、出来た」
彼はわたしのほうなんて少しも見ずに、パッと退部届の紙飛行機をグラウンドに向かって飛ばしてしまった。
風に何度も煽られ、方向を変えて、ひらりふわりと危なっかしく飛びながら、それは真っ直ぐにグラウンドへと飛んでいく。
加瀬は紙飛行機から目を離さない。
「辞めんなよ、西宮」
「………」
「……アイツら、西宮のこと大好きだからさ。これからもいてやれよ」
「……でも、わたしは……」
奪ってしまった。
みんなから、加瀬を奪ってしまった。
将来有望な加瀬の足を。
加瀬の生きる理由を。
加瀬の未来を。
加瀬はもう、走れない。
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