第1章

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「練習日や時間の変更だったり、大会の概要とか、結構大事な内容でしょう? マネージャーさんが怒っても仕方ないですね」 「はは・・・やっぱり?」  照れたように頭に手をやる上村の姿を見ていると、真央は何だか久しく会っていない兄と話している気分になった。  元気にしているかな────真央が随分前の記憶を思い返していると、隣の上村がすっと立ち上がった。  きょとんとした顔で見上げる真央に上村は、 「ごめん・・・そろそろ俺行かないと。バイトなんだ」  言われて真央も手元のスマホを見れば18時を過ぎていた。 「わぁ・・そんなに話していないのにもうこんな時間。私も帰らないと」 「ごめん、急かすようで」 「いいんです。あ、今日私バスで帰るんであっちなんです。上村さんのバイト先と逆方向なんで、ここでさよならですね」 「え、ああ・・そう。でもバス停まで送らなくていい?」 「大丈夫です。公園の中央口出たところだからすぐだし・・」 「そう・・じゃあ、今日はタオルありがとう。ごめん、最後何かバタバタして」 「こちらこそジュースありがとうございました」  お互いコメツキバッタの様に頭を下げ合いながらもようやく別れた後、真央は一人でバス停に向かった。  途中で一度振り返ってみたが、もうそこに上村の姿は無かった。 「バイトの時間ギリギリだったんだよ、きっと」  姿が見えなくなるまで見送ってくれるのは少女マンガの中だけの話だったようだと真央は思った。現実は拍子抜けするくらいあっさりしたものだ、とも。 「もしかして・・」  プレゼントも本当は迷惑だったかも────自分では選ばない色だと上村は言っていた。裏を返せば好みの色でないということになる。  何を贈るか選ぶところから悩みに悩んだ真央想いは上村に伝わっただろうか。 「付き合うって難しいんだな」  とぼとぼと歩道を歩いているとバス停の停車スペースに一台の車が停まっていた。  ここはバスが停まるところなのに、と真央が通り過ぎる時に眉を寄せて車を睨んでいたら助手席側の窓が開いていて、こちらを向いていた運転手とばっちり目が合った。 「こんにちは」 「え・・あっ!」  そこにいたのはバーガーショップの店員で、自転車の鍵を一緒に探してくれたあの男だった。
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