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結局なにも話すことなくパンを食べ終えてお茶を飲んでいると、目の前から小さく息を吐くのが聞こえてきた。
そしてここに来て初めて仁が口を開いた。
「行くぞ」
「え」
既に立ち上がって歩き始めている仁は「ついてこいよ」と付け加えて、そのまま食堂を出ていってしまった。
慌てて小走りでそのあとを追いかける。
そして仁が足を止めた場所は屋上だった。
フェンスに寄りかかるように体を預けて振り返った仁は、真っ直ぐな瞳をあたしに向ける。
「思ったより人が多かったから、場所を変えた」
確かに食堂は空いている席がほとんどないんじゃないかと思うほど人で溢れかえっていた。
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