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普段のめちゃくちゃ優しい仁を、いつも深く愛してくれる仁を、心のどこかで信じていたのに。
あたしが本気で訴えれば、きっと浮気をやめてくれるって、あたしだけを見てくれるって。
だけど、違ったんだ。
そう思ったら、目の奥からじわりじわりと熱いものが込み上げてきた。
今にも溢れだしそうなそれを堪えながら、
「ごめん……今日は帰るね」
そう言って、その場から一気に駆け出して屋上から出た。
「はあ?」とか「彩葉!」とか、仁の声が色々聞こえてきたけれど、とにかく走って仁が追いかけてくるのをなんとか振り切った。
きっと見渡しのいい場所とかだったら追い付かれていたと思う。
でも、階段や曲がり角などの障害物の多い大学内ではうまく逃げることができた。
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