第1章

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 同じ内容をぐるぐると考えて、魔王はしまいに頭にきた。  それもこれも全部、自分のものにならない勇者が悪い。 「勇者の馬鹿――!」  近くの茂みが、かさかさと音を立てた。 「魔王?」  そこには紛れもなく勇者本人が立っていたのだった。 --------------------------------  魔王は全力で逃げた。逃げなければならないという直感が働いたからだ。  だが勇者はそれにも勝る俊敏さで動き、魔王の襟首を捕まえた。 「離せ、離すのだ!」  じたばたと暴れる魔王。  まずいまずいまずい、何故だがそんな予感がして必死で抵抗して逃げようとするも、勇者の力は思いのほか強く逃げ出せない。  その内に、勇者は魔王を抱き寄せて、魔王の耳元で囁いた。 「お前、魔王だろう?。なんでこんな所にいるんだ?」  魔王は固まった。しかし、 「イエ、ワレハマオウデハアリマセン。ヒトチガイデス」 「ほう、こんな変わった服装をした一般人が他にもいるのか」 「ソウナンデス」 「嘘をつけ! 確かに魔王のような魔力は感じないが、俺が見間違えるはずがない!」  勇者の最後の行で、一瞬ドキッとしてしまった魔王だが、自分をしっかりと持てと意識を奮い立たせる。 「本当に一般人だ。これはこすぷれ?なのだ」 「いや、お前は魔王だ」 「何故そこまで強情なのだ!」 「強情なのはお前の方だろう!。本当に嫌なら魔法でもなんでも使って逃げればいいだろう!」 「ぎくっ」 「……おい」 「……」 「……まさかお前」 「……」 「……魔法が使えない」 「あーあー、聞こえないー」 「……へえ」  楽しそうに勇者が笑うのが聞こえた。魔王は背筋がゾワッとする。
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