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「つまり、今のお前は全くの無力、というわけだな」
「ぐ、悪いか。呪いの首飾りのせいで、我は今、一般の村人とそう変わらぬ」
「何でそんな事になったんだ?」
「しれたことよ。勇者が最近力をつけてきたので、自分のものにするためにはそのレベルまで下げて、首輪をつけて飼ってやろうと思……は!」
「……ほう」
「い、いや別に我は、最近勇者が他の仲間と仲がよいとか、マリス村の女の子に告白されたとか全然気にしていないのであって」
「……ずいぶん詳しいんだな」
「それはもう我の力があれば千里眼などたやすい。て、敵の情報を集めるのは当然だからな」
「敵、か」
「そうそう、て……んんっ」
そこまでしか魔王は言えなかった。
勇者にキスをされてしまったから。それも、舌が口の中へと潜入する深いキスだった。
その初めての感覚に魔王は逃げ出そうとするも、顎を固定され逃げることが出来ない。
「んんっ……くっう……んっ」
ぴちゃぴちゃと唾液の絡まる音が聞こえて、魔王は恥ずかしくて堪らないのに。
体は芯の方から熱を帯びて、目頭が熱くなる。
頭がぼんやりとして、魔王はこの快楽に身を任せてしまう。
とうとう体から力が抜けて、勇者に魔王が寄りかかる形となる。
そこで、勇者は唇を離した。
「あ……」
上気した顔で、魔王は勇者を見上げる。
その時魔王は自分では気づいていなかったが物欲しそうな顔をしていた。
だが、勇者はそれを静かに見下ろすと、魔王の体を地面へと押し倒した。
「痛っ……何をするのだ……えっと、もしもし勇者……」
魔王の両手を抑え地面に組み伏せて、見下ろす勇者の顔はどこか不機嫌だった。
自分がこれからどうなるのかは、鈍感な魔王といえど予想は付く。だが、信じられなかった。
「……何を……する……つもりだ」
所々か細い声になってしまうのは、不安の表れ。
けれど、勇者はそれに対してつまらなそうに答えた。
「言わなくても分かるだろう?。子供じゃないんだから」
勇者は魔王の首筋にそっと唇を押し当てる。
魔王の体がびくんと震える。
その様子を見て、勇者は小さく笑い魔王の上着を脱がし始めた。
それに魔王は必死に抵抗する。
「なんで暴れるんだ?」
「いや、勇者よ、そういう質問するお前がおかしい!」
「俺の事が嫌いなのか?」
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