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「だが、ここまでやったら襲うしかないよな!」
「どうしてそうなった!」
「魔王のことを愛しているから、だから、駄目か?」
反則だと魔王は思った。
そんな切なそうに、愛してるとか。
それに、捨てられた子犬のような目で、そんな目でこっちを見……。
葉の隙間から光る目が四対、魔王の視界の端に見えた。
「……勇者よ、一つ聞いていいか?」
「なんだ?」
「お前の仲間は何処にいる?」
「……」
「……」
「……大丈夫だ。愛してるから!」
「このエロ勇者! 何処からどう見てもそこにいるではないか! 他人の前でそういう行為に及ぶ奴が何処にいる!」
「ここにいる!」
「いばるな―――――!」
「いや、機会は有効に使わないと」
「我はベッドの上でしかやらない!」
言ってしまって、慌てて魔王は口をつぐむ。盛大な墓穴を掘った気がした。
勇者が非常に嬉しそうに笑っている。
――まずい、このままだと我の貞操が危ない。
冷や汗をたらしながら、魔王がどうしようと考えていると、
「……ベットの上ならいいんだな?」
「いや、えっとそれは言葉の文で……というより、もしかしたなら聞き間違いという可能性もあるのではないかなと我は思うわけで」
「いや聞いた。お前達も聞いたな?」
その言葉に反応して、勇者の仲間達が、
「「「「はい」」」」
と藪から一斉に顔を出した。
全員、タイプが違うが見目が良い。
もっとも勇者の仲間となると、実力の方も折り紙つきなのだろう。
「よし、そうと決まれば次の村はどれくらいだ?」
「ここから二日ほどいった所にある、カレットの村が一番近いですね」
その中で一番年長ともいえそうな男が言った。
「よしそこで……」
「ま、待て。我が付いて行くとは言ってはいない。それに我は魔王で、勇者は魔王を倒すものであろう」
そこで全員が黙った。沈黙が魔王には痛かった。
勇者が、魔王の肩をぽんと叩いた。
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