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「大河内…さん…はるき…さん」
ダブルベッドで夜を共にした、神戸尊が、大河内春樹の名前を思わず呟く。
「神戸!?」
大河内は、たまらなくなって、ベッドからバスローブを取りに行った。
神戸尊はまだ浅い眠りについていた。
「仕方ないな」
大河内は、バスローブに着替え、神戸が寝ているベッドの上に、もうひとつのバスローブをそっと置いた。
神戸はそれに気がついて、
「大河内さん…バス…ローブ…」
と言うと、大河内は、少し神戸を宥めるようにして。
「早く着ろ。こんな格好じゃあ、地震でも来たら大変だ」
そんな神戸はというと、
「大丈夫で~す。有名な警視庁陸の孤島、特命係の神戸尊で~す。地震が来たら、きっと飛ばされますから」
と冗談粧す。
「冗談言うな。俺のそばに居ろ」
大河内が思わず神戸をぎゅっと抱きしめた。
2人はスーツに着替えて、コートを羽織った。もう、冬がやってきていた。
「今日、新聞読んでないし、テレビも見てないし、手帳もつけてなかったでしょう、大河内さんってば」
神戸は何かウキウキしているようだった。
そう、今日は、12月24日、クリスマスイヴなのだ。
街中がクリスマス・ムードで溢れていて、山下達郎や、イングリッシュの、クリスマスソングがあちらこちらからきこえてくる。
「あぁ…そうか。もう、クリスマスか。一年の過ぎ去るのは早いな」
「世間に疎くなってませんか?大河内さん」
「まあな。監察官室に独りでいるとな。友達なんて少ないし」
それを聞いた神戸が、
「友達って、僕ぐらいですか!?」
と、悪戯に微笑む。
「いやぁ、別に」
大河内は目を曇らせた。何かがあったんだ、と、神戸は察した。
「神戸、クリスマスケーキ買ってきてくれないか」
「え!?大河内さん、そんなこと言っても、大体、クリスマスケーキなんて、何日も前から予約しないと買えないのが常識ですよ。それとも、長い列に数時間並んで、ケーキをゲットするつもりなんですか!?」
「そうか、そうか。怒るなよ、神戸。そんな風潮になっていたんだよなあ」
こう見えて結構世間知らずなとことのあった大河内春樹。
そんな大河内に、神戸が、言った。
「僕がクリスマスケーキになります」
「は!?」
神戸尊は、少し、いや、大真面目になて言った。
「僕が大河内さんのサンタクロースになります。僕の全てが、大河内さんのものです」
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