第1章

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1 「大河内…さん…はるき…さん」  ダブルベッドで夜を共にした、神戸尊が、大河内春樹の名前を思わず呟く。 「神戸!?」  大河内は、たまらなくなって、ベッドからバスローブを取りに行った。  神戸尊はまだ浅い眠りについていた。 「仕方ないな」 大河内は、バスローブに着替え、神戸が寝ているベッドの上に、もうひとつのバスローブをそっと置いた。  神戸はそれに気がついて、 「大河内さん…バス…ローブ…」 と言うと、大河内は、少し神戸を宥めるようにして。 「早く着ろ。こんな格好じゃあ、地震でも来たら大変だ」 そんな神戸はというと、 「大丈夫で~す。有名な警視庁陸の孤島、特命係の神戸尊で~す。地震が来たら、きっと飛ばされますから」 と冗談粧す。 「冗談言うな。俺のそばに居ろ」 大河内が思わず神戸をぎゅっと抱きしめた。  2人はスーツに着替えて、コートを羽織った。もう、冬がやってきていた。 「今日、新聞読んでないし、テレビも見てないし、手帳もつけてなかったでしょう、大河内さんってば」  神戸は何かウキウキしているようだった。  そう、今日は、12月24日、クリスマスイヴなのだ。  街中がクリスマス・ムードで溢れていて、山下達郎や、イングリッシュの、クリスマスソングがあちらこちらからきこえてくる。 「あぁ…そうか。もう、クリスマスか。一年の過ぎ去るのは早いな」 「世間に疎くなってませんか?大河内さん」 「まあな。監察官室に独りでいるとな。友達なんて少ないし」  それを聞いた神戸が、 「友達って、僕ぐらいですか!?」 と、悪戯に微笑む。 「いやぁ、別に」  大河内は目を曇らせた。何かがあったんだ、と、神戸は察した。 「神戸、クリスマスケーキ買ってきてくれないか」 「え!?大河内さん、そんなこと言っても、大体、クリスマスケーキなんて、何日も前から予約しないと買えないのが常識ですよ。それとも、長い列に数時間並んで、ケーキをゲットするつもりなんですか!?」 「そうか、そうか。怒るなよ、神戸。そんな風潮になっていたんだよなあ」 こう見えて結構世間知らずなとことのあった大河内春樹。  そんな大河内に、神戸が、言った。 「僕がクリスマスケーキになります」 「は!?」  神戸尊は、少し、いや、大真面目になて言った。 「僕が大河内さんのサンタクロースになります。僕の全てが、大河内さんのものです」
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