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光輝の中では大虎はヒーローだった。
困った時には何気なく手を貸してくれ、かと言って自分の目の前に立つことは無い。
一つ上の兄のせいで囲まれた時も、いつの間にか傍に居て、自分を守ってくれると言うよりは、隣で一緒に戦ってくれた。
恩着せがましいことは言わないし、終わればすぐにどこかへ行ってしまう。
だが、見つけて傍へ寄り、絡む自分を拒絶する事もしない。
ここぞという時には必ず隣に居て、そして、終わった後はふっと微笑む。
出会って間もなく、光輝は自分とは正反対なあの男に、小さいながらに人として惚れた。
出会ったころからの事を思いだしていた光輝は笑う。
黒虎の歴代総長のどの人もそうだったと言うように。
屈託なく、笑った。
銀にとって大虎と言う存在は、自分が信じる、この笑みを漏らす男が信頼する男。
だから自分は大虎を信頼する。
実際一度、光輝がタイマンでケンカをふっ掛けられた横、手を出そうとした別な男を大虎が一発で仕留めたのを目の当たりにしている。
見届け人としてあの場に居たのだが、大虎の一瞬の鋭い目に、離れていた自分もぞくりとした。
銀二はそれを思いだし、口の端を持ち上げた。
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