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『コウさんに返したはずなのに何でここに』
銀の数珠を拾った歩は傷ついて倒れている茜の姿を見た。
『茜さんが!』
驚いた歩は数珠を落とした。
『どうしたんだ歩』
『茜さんが傷ついて倒れてる姿を見たんだ』
『何者かに襲われたってことか…コウって人は側にいなかったのかな』
『俺、行ってくる』
銀の数珠を持って歩は玄関に行った。
『俺も一緒に行くよ』
光太と歩は家を出て狐神社に向かった。
その頃、コウとココは剣と剣で戦っていた。
『コウ、今の俺には勝てない』
ココは紫の剣を振り下ろしコウの体を傷つけた。
『うあああ…』
コウは仰向けで倒れた。
ココは倒れているコウに剣を向けながら『お前の代わりに歩は俺が幸せにしてやる、だから安心して死んでくれ』と言ってココがとどめを指そうとしたその時、最後の力を振り絞って立ち上がったコウは手に持っている普通の剣をココの心臓に突き刺したまま倒れた。
ココはコウを退かせ立ち上がると心臓に突き刺さっている普通の剣を外し捨てた。
『残念だったな、俺は生きてる』
ココは力尽きて倒れているコウを見つめた。
『……』
『今度こそとどめを指してやる』
ココが言ったその時、闇で出来た紫の数珠が壊れココの手首から離れた。
その瞬間、ココは闇に空間に飲み込まれていった。
『ココ…』
見ていたコウは立ち上がりココの死を悲しんだ、そして落ちている紫の剣に目を向けた。
ー狐神社ー
『茜さん、しっかりしてください』
歩は茜の体を支えながら上半身を起こした。
『……』
『茜さん…茜さん…』
『うう…』
目を覚ました茜は歩を見つめた。
『茜さん!』
『歩さん…』
『生きてて良かった』
歩が涙を流したその瞬間、右手首にはめている銀の数珠が光り茜の傷ついた体を治し始めた。
茜は歩から離れ立ち上がると治っていく傷に驚いた。
『……』
『見ろよ』
壊れた水晶が治っていく姿を見て光太は声をかけた。
歩と茜は水晶に近づき見つめた。
『歩さんの涙が眠っていた銀の数珠の力を目覚めさせたのよ』
『俺の涙で…』
歩は右手首にはめている銀の数珠を見つめた。
『少しでも持ち主の気が数珠に入れば、その数珠は持ち主の為に働く』
『……』
『手離しちゃ駄目よ』
『はい』
歩は銀の数珠を見つめながら心の中でありがとう言った。
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