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『祐実を手に入れたいなら指輪を掴んで祐実をものにしろ』
『……』
闇妖怪の姿はなく声だけが聞こえグレンは立ち尽くした。
それから暫くしてグレンは黒い指輪を掴みその指輪をじっと見つめた。
『この指輪をはめれば、祐実さんは俺のものになる』
指輪を持ったまま目を閉じたグレンは考えた。
『……』
目を開けたグレンは黒い指輪を左手の中指にはめた。
すると闇の指輪はグレンの心を乗っ取った。
『祐実は俺のものだ』
グレンはその場から姿を消し神社の門の前に姿を現した。
『……』
祐実と抱き合っていたブラッディは闇の気を感じ祐実から離れた。
『どうしたんだ』
乱れた巫女の服を整えながら言った。
『闇の気を感じた』
『闇…』
祐実は不安を感じた。
『そんな顔をするな、祐実は俺が守る』
ブラッディは祐実の頬に触れながら微笑んだ。
『ブラッディ…』
祐実はブラッディに抱きつき口づけを交わした。
その頃、コウと歩と茜と光太はグレンと向き合っていた。
『グレン、その気はまさか』
コウの問いにグレンは笑みを浮かべ口を開いた。
『兄貴が闇に汚されていた時から俺は祐実さんに思いを寄せていた、今も変わらず祐実さんに思いを寄せている』
『お父さんを手に入れたいがために闇に心を捧げたっていうのか…そんなの悲しすぎる』
歩は涙を流した。
『そんなものに頼らないで、好きだって告白すれば良いじゃないか、それで断れても次の恋をすれば良いんだ』
光太はグレンに向かって言った。
『次の恋をしてるからそんなことが言えるんだ』
『……』
グレンの言葉に足が動いた光太はグレンに近づき口づけを交わした。
『嘘でしょ』
茜とコウと歩は光太の行動に驚いた。
唇が離れ光太は自分がした行動に頬を赤らめ『ごめん』と言ってグレンから少し離れた。
そこへブラッディと祐実が現れた。
『グレンさん!』
『……』
祐実に目を向けたグレンはその場から姿を消した。
歩は光太に近づき声をかけた。
『光太…』
『俺には茜がいるのに、何でグレンさんにキスなんかしたのかな』
『闇に心を捧げたグレンさんを助けたいという光太の気持ちが行動を起こさせた』
『……』
光太は茜の方に顔を向けた。
茜は何も言わず部屋の中に入っていった。
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