俺、狙われてます

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『茜…』 光太は悲しげな顔でうつ向いた。 歩は祐実に近づき『光太と一緒に家に帰って良いかな』と言った。 『2人だけじゃ危険すぎる』 『俺がついてますから心配しないでください』 コウが言った。 『コウがいれば安心だ』 ブラッディは心配そうな顔をしている祐実の肩に触れた。 『そうだな…コウさん、2人をお願いします』 祐実はコウに頭を下げた。 『光太の気持ちが落ち着けばすぐに戻ります』 『光太、行こう』 歩は光太の手を掴み神社の門から出ていった。 コウも祐実に頭を下げると歩と光太のあとを追いかけていった。 その頃、グレンはビルの屋根の上で立ったまま光太に口づけをされた唇に触れながら光太のことを思っていた。 『……』 『何の力もない男にキスをされて惚れてしまったか』 『見てたのか』 声のする方に顔を向けたグレンは立っている闇妖怪を見た。 『答えろ、力のないあの男に惚れたのか』 『答えられない』 『もし力のないあの男を好きなら、俺はその男を始末する』 『殺そうとしなくてもいいだろ』 口答えをするグレンに闇妖怪は胸ぐらを掴んだ。 『俺の目的は祐実だ、他の男にいかれては困る』 闇妖怪は手を離し睨み付けるグレンを見た。 『俺はお前のために祐実さんを手に入れる訳じゃない、それだけは覚えておけ』 『ふん…』 闇妖怪はその場から消えていった。 『…あのキスから俺の心は変だ…あいつの言う通り惚れてるのか…』 闇の指輪に心を乗っ取られているはずのグレンの心は正気を取り戻そうとしていた。 ー歩の家ー 『光太、何か食べたいものがあるか』 『どうしてグレンさんにキスをしたのか知りたいんだろ』 『……』 歩とコウは光太に目を向けた。 『俺にもわからないんだ、なぜグレンさんにキスをしたのか…俺…グレンさんのこと好きなのかな』 ニコッと笑った光太は歩に背を向けた。 『本気でグレンさんのことが好きなら茜さんに言わないと、茜さん傷つくよ』 『歩に言われなくてもわかってるよ、すまないが1人にしてくれないか』 光太は家を出ていった。 『光太!』 『歩!』 コウは追いかけようとする歩の手首を掴み足を止めた。 『何で止めるんだよ』 『グレンの狙いは祐実さんだ…落ち着くまで1人にしてやれ』 コウの言葉に歩は頷いた。
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