俺、狙われてます

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透は隣の部屋に行き『兄貴、柚子、出ていったぞ』と言ってユウトに近づいた。 『ほっとけ、それより作戦会議をするぞ』 『兄貴さぁ、もしかして惚れてんのか』 『今はいいだろ』 『聞きたいんだよ、そうしないと柚子が可哀想だろ…祐実に惚れてるなら柚子にそう言えよ』 『柚子に惚れてるのか』 ユウトの言葉に透は頬を赤らめた。 『…別に惚れてなんか…』 『惚れてるならお前にやるぞ』 『そうな言い方するなよ、惚れあって付き合ってたんだろ』 怒鳴った透は部屋を出て行った。 『どいつもこいつも勝手にしろ』 ユウトは椅子に座りイライラを落ち着かせるため目を閉じた。 ー狐像がある神社ー 部屋の前の廊下で歩と光太とコウとグレンは祐実の体調を心配していた。 『光太、元気になるよな』 『絶対、元気になる、信じて待つんだ』 『あぁ…』 歩は廊下に体育座りで座り顔を埋めた。 『歩…』 『光太』 グレンは心配そうな顔で歩を見つめる光太の肩に触れた。 『グレン』 光太はグレンに少し微笑んだ。 コウはドアを見つめながら祐実の復活を祈った。 それから暫くしてドアが開きブラッディが現れた。 『祐実が目を覚ました…歩、祐実が呼んでる』 『お父さんが…』 歩は立ち上がり祐実の側に行った。 『お前達は話がある』 ブラッディはドアを閉め隣の部屋にコウとグレンと光太を連れていった。 『お父さん』 歩は正座で座り祐実を見つめた。 祐実は上半身を起こし『もう大丈夫だから、おいで』と言って両手を広げた。 歩は祐実に抱きつき涙を流した。 祐実は歩を抱き締めながら『男の癖に泣き虫だな』と言った。 歩は祐実の顔を見つめ『お父さんだって泣き虫じゃないか』と言って歩は祐実の流れる涙を拭った。 『親子で泣き虫っておかしいな』 『…そうだな…』 歩と祐実は微笑みあった。 その頃、ブラッディは真剣な顔でコウとグレンと光太に指輪を差し出していた。 『金と銀の指輪?』 『兄貴、どうしたんだよこれ』 『俺が作ったんだ、お前達の身を守ってくれる』 『……』 コウとグレンと光太は指輪を受け取った。 『左手の中指にはめろ』 ブラッディが言うとコウとグレンと光太は左手の中指に金と銀の指輪をはめた。
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