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その時、再び頭の中にひどく陰気な声が聞こえて来る。
{もう終わらせてやろうかしら…何もかもどうでもいい。ごめん…舞希…}
この声はルゥにも聞こえたらしく、俺とルゥがほぼ同時に顔を見合わせると、声のしてきた方へと一斉に駆け出していた。
路地裏を抜け、曲がりくねった細い小道をひたすら走り続けると、邪気の臭いが強まってくる。しかし、300mほど進んだ地点で大通りに出てしまい、大勢の人々が行き交う臭いと気配とで、邪気の臭いはかき消されてしまっていた。京野の姿を完全に見失ってしまったようだ。
『いなくなっちまったな。低級妖も闇の臭いすらもしねぇ』
「とりあえず………イタチを会場に1人置いてきてしまったし、会場に戻ろうか」
少年と黒猫とか踵を返したところで、胸の内ポケットから携帯の着信を知らせる振動が与えられる。イタチからであった。
「イタチ?ごめんね、用は済んだから今から会場に戻るよ」
「お♪帰っちゃったかと思ったが、ちょうど良かった。さっきアオに話しかけてきた女性のことを知ってるって人が、お前に話があるんだとよ。戻ってきたら紹介する」
会場に戻ると、入り口付近でイタチと先ほど京野舞依に呼びかけた女性が待っていた。
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