紅蓮と雷鳴

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校舎内に入るとすぐに大きな吹き抜けが出迎えてくれる。そこから鳥が両翼を広げたように左右に長い廊下が伸び、真正面には豪奢(ごうしゃ)で歴史を感じさせる階段が円形に展開されており、さながら宮殿のダンスホールのようにも見える。そして、階段の上には日光を存分に取り入れられるように計算尽くされたガラス張りの窓が、一面びっしりと張られている。 学び舎というより、客人を迎える迎賓館(げいひんかん)のような装いである。 歴史ある建造物であるのにどこかモダンで、この校舎だけでも見る価値はあると思わせてくれる。 早くもさっきまでの帰りたい気持ちは薄れ、建物内を探索したい気持ちでウキウキしてきた。 隣にいるユキさんそっちのけで、ついつい建物の構造について思いを巡らせていると 「こっちの教室にお目当の人いるから」 と、ユキさんが案内してくれた教室には、1人の女子生徒が教室の窓から身を乗り出していた。 「風早くん連れてきたよー」 「初めまして、風早と言います。お話を聞かせていただけるとのことで、助かります」 色素の薄いふわふわの長い髪に風を受けている女性が、声に気づき逆光の中振り返る。腰まである髪の毛が、振り返るとますます軽やかに風になびき、いかにも柔らかそうにふわりと舞い上がっては肩に落ちる。 俺はその様子に、少しだけ懐かしさを覚える。 《この感じ………どこかで見た気がする》
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