紅蓮と雷鳴

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しかし、次の瞬間懐かしさはどこかへ行ってしまった。 振り向いた女性は俺の姿を認めると、途端に顔を真っ赤に染め上げ、そのまま声を発することなくユキさんに向かって手招きをしている。ユキさんはイタチの時同様“仕方ないなぁ”と女性に近づき、女性から耳打ちをされて呆れた表情を浮かべている。 「あー…風早くん、ごめん。この子、百合(ゆり)って言うんだけど…どうやら風早くんが眩しすぎて直接お話しできないらしい。なんで、私が通訳する形になるけどいいかな?」 「えと…それは別に構わないけど」 俺は懐かしさを覚え心が()き立った気持ちが一瞬にして冷えていくのを感じ、快諾(かいだく)するも、その後の会話にはほとんど集中できなくなってしまった。挨拶をしても挨拶すら返ってこない有様にも苛立(いらだ)ちを覚える。 《やっぱり………女の子って苦手だ》 見た目でばかり判断されることに辟易(へきえき)としていた俺は、結局話を聞いている間中、百合と呼ばれた女性を見なかった。
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