紅蓮と雷鳴

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舞希が亡くなってから、舞依は自ら孤独を選択したってことなんだろうか。それとも、舞希の死自体に彼女しか知らない謎が隠されている…とかか。 どちらにせよ、ここで得られる情報はもうなさそうだ。 俺がユキさんと百合という女性に丁寧にお礼を述べているとき、全身の毛穴を微弱な電流がゾワゾワと走る感覚がし、俺はその場で凍りつく。と同時に聞き覚えのある声と気配を背後から感じる。 「キーーーサーーーマーーー!」 聞き覚えのある声は、ドスドスと快音をあげながら教室に雪崩(なだ)れ込んでくると、百合という女性の前に立ちはだかって声を荒げる。その瞳には殺意にも似た恐ろしい光まで浮かべ、怒り狂った獣のように吠え掛かってくる。 「風早!!!こんなとこに何しに来た!ナンパか!?貴様、彼女いるくせに何様だ!」 俺に“貴様”と呼びかけてくる目の前の大柄な女性は、【一ノ瀬唯(イチノセ ユイ)】。長身スレンダーな175cmのショートカット、京都の“天雷(てんらい)神社”宮司の1人娘であり、俺とは幼少期に1回、ここ最近にも何度か遭遇(そうぐう)している。俺と一ノ瀬とは因縁(いんねん)の仲とも言える間柄である。
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