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しかし一番の因縁は………あれ………?
「一ノ瀬?彼女って…誰のことだ?」
俺は全く身に覚えのない一ノ瀬の言いがかりにも似た言いように、ただ首を傾げて問いを投げかける。一ノ瀬も俺の問いを受け、今までの憤慨ぶりが嘘のように、全身から溢れ出る殺意が音を立てて抜けていくのが見える。
「ん……んん?あれれ…?お前の隣にいつも誰かいたように思ったが…むむむ」
しばらく腕を組んで考え込んでしまった一ノ瀬であったが、吹っ切れたように手を叩くと、百合の方を振り返り肩を抱く。
なるほど…一ノ瀬が怒った理由も分からないでもない。自分の彼女が別の男に口説かれていると勘違いしたのだろう。
(一ノ瀬は失礼なやつではあるが、基本的に穏やかな性格だったはずだが…)
「私の百合に何か用か知らないが、彼女と話したいなら私を通せよな。で…何の用だ?」
「いや。もう用事は済んだから、話はもうないよ。一ノ瀬の彼女と知らなかったとはいえ、誤解させたなら悪かったな」
俺は一ノ瀬の面倒臭い性格を嫌というほど知ってることもあり、呆気に取られているユキさんと百合という女性に会釈をすると、その場から立ち去ろうとする。が…一ノ瀬は気が済まないらしく、俺の腕を掴んで離そうとしない。
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