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上空8mほどの高さにある橋のケーブルの上に座り、自分の怖いもの知らずと類い稀な運動神経をアピールしている少女に向かって、俺は現状分かっていることについて包み隠さず話す。
「つまり………夢喰の死の予言(予知夢)に出て来たマイだかマキだか…どっちでもいいが。ターゲットがやっと分かっただけであって、今回はどういう状況でその女が死ぬか分からない。そう言いたいのか?」
すでに俺の話を聞いていた一ノ瀬は飽き始めているのか、手元から稲光を放っては遠くの羽ばたく鳥達を恐れさせている。この稲妻に当たってしまってはひとたまりもない…周囲には人はおろか、動物達も逃げて行ってしまい、動物の息吹すらも感じられない。
(とは言え、実際に一ノ瀬が生き物を傷つけたことはないようだが)
そんな状況でも話だけはしっかり聞いているようで、一ノ瀬にとっては珍しいことに思える。
「そう。簡単に言えば、今まで見て来た死の予言とはだいぶ違うようなんだ。本来なら、ターゲットが何者かに狙われている場合、ターゲットの目線で死ぬときのヴィジョンが見え、その死を回避するために俺がお手伝いをするわけだが…。今回はすでに3年も前に亡くなった女性の目線で、手遅れの段階での予知夢だったわけで…」
それに…
そもそも予知夢自体がおかしいのではないだろうか?
作りもののような紺碧の空… 虹色の橋…ひやりとしたものの心地良ささえ感じる水の感触…
何となくだが、実際に舞希が見たヴィジョンにしては現実味が足りない気がする。
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