【Case1】 魂を2つ宿す者

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俺は風早蒼という人間の肉体に、蒼自身と【夢喰(ゆめくい)(ユメクイ)】という魂を宿している。 この夢喰という生命体は、俺が6歳のときに俺の体に降ってきたのだが、お互いの存在を認識したのはつい最近のことだ。これを“魂の融合”と呼ぶらしい。 夢喰には困っている人の未来の運命が【予知夢】として見える。なぜなら、夢喰は【夢の番人】であり、すべての人(たまには動物や魂が宿った物でさえ)の夢を管理しているから。その中から、特に“不条理な運命”によって生命の危機に陥りそうな“善良な魂”が選定され、【夢の信託(しんたく)】を受けるのだという。 予知夢は夢主(ゆめぬし)の目線で見えるので、俺はこの夢を見るたび生きた心地がしない。だってそうだろう?ほとんどの夢は死の予知夢で、毎回“文字通り”死ぬ思いをするのだから。 さっきも、ホームルーム中に居眠りをしてしまったのは、予知夢を見ていたからだ。 まもなく、俺の相棒が俺を呼びに来るだろう。 『夢喰様、私めの出番でしょうか?』 ほら、来た。漆黒の髪と両翼と、碧色に輝く瞳を持つ美しい少年…いや、黒猫の【ルゥ】が俺の相棒だ。 ルゥの本名は【Ludwig Wahnlicht(ルードヴィヒ ヴァンリヒト)】。長いのでルゥと呼んでいる。
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