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「私の方が死ぬべきだった…あの日も…むしろ幼少時にビルから落ちていれば…」
うわああああああ!
人間の心を取り戻した舞希からは、深い悲しみと絶望が慟哭(どうこく)となって溢れ出す。
男に妹と同じ痛みを与え、復讐をすることで償おうと決意したのが、完遂できなかった。
ここでも“舞希が逃げた”ことで、手遅れになってしまった。
人を憎むことは苦しいことだ。人を好きになることの方が、ずっと容易い。憎しみから逃げようとした舞希の行動は、何ら間違っていない。
間違っていないのに…かつて妹に謝ることからも逃げ、恋愛からも逃げ続けてきた自分自身を許せなかった。
復讐を遂げる相手がいなくなった舞希に残された道は、自分自身を憎み、呪うことだったのだ。
その呪う気持ちが、闇を呼び寄せ、自らの意志で闇に堕ちてしまったのだ。
泣き崩れたまますっかり呆けてしまった舞希の後ろに、先ほどから淡い光を放つものがいる。その淡い光は薄桃色に鈍く輝き、弱々しくも暖かな空気を纏い、あたかも舞希をかばうかのように、舞希の成れの果ての姿を包み込んでいる。
その光に向かって、俺は話しかける。
「俺に………予知夢を見せてくれたのは…君だね?京野舞依」
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